缶サット甲子園2011 大会講評

「理数が楽しくなる教育」実行委員会 会長 土岐 仁



4回目となった缶サット甲子園2011は,参加21校のうち地方予選を経て11校が8月5日(金)~7日(日)伊豆大島にて開催された全国大会に出場し,佐賀県立唐津東高校が優勝しました.大会当日は快晴に恵まれたとはいえ風が強く,各校ともパラシュートの調整に悩まされましたが,このような「想定外」の事態にも全力を挙げて対策を講じ,それを乗り越えようと最善を尽くすことが生徒を大きく成長させるのではないでしょうか.

今回の課題は二つあり,一つはターゲットの動画撮影であり,もう一つは各種データの取得です.どちらかに偏った達成度の高校が多い中,優勝した唐津東高校は両方の課題ともうまくまとめたことが高得点につながりました.なお,無線によるデータの取得は能代高校だけが成功しており,今後無線対策が大きな課題となりそうです.気象条件はコントロールできませんので,缶サットがロストとなる場合もあります.無線によるデータ取得が出来ない場合は得点がゼロとなることを避ける意味でも,無線技術は重要です.

技術賞を受賞した武雄高校のプレゼンでは,このような強風の中でも極めて安定した動画撮影が出来ていることを披露し,会場から大きな拍手がわき起こりました.皆さんが選んだ技術賞とも言えましょう.缶サットの機構,構造系をしっかりとしたものにしておくことが重要です.全般的にプレゼン能力は年々向上していますが,独自の工夫点を実験に基づきわかりやすく説明した桐蔭高校がベストプレゼンテーション賞を受賞しました.


今後の課題としては次の二点が挙げられます.

  1. データ取得の目的の明確化
    各種センサによるデータ取得は各校とも実施していますが,データ取得が目的化してしまい,何のためにデータを取るのかがよく分かっていないところがありました.ロケット発射から缶サットの着地までの間に何かを明らかにするためにデータを取得するのであって,物理的な考察の下に何が分かったのかを示してもらいたい.
  2. センサの使用法
    センサには様々な規格があり,計測目的にあった仕様であるかどうかを確認すること.また,センサによる計測値を鵜呑みにせず,正しい値であるかどうか,十分な検証をして欲しい.これらのことは実際に缶サットを放出しなくても実験室内で実施できるので,基礎技術の習得をしてください.